ギア・ドール


「名前は、『皐月』言うらしい・・・。この地に昔から眠るギアや。」


 しかも、相当古いのか・・。


 ダメだ・・・こりゃ・・・。


「はぁ~・・・」


 鈴蘭の口から、思わずため息が漏れる・・・。


「どないした?」


「いや・・・お前が、ギアの操縦でも天才的な技術を持っているって言うんなら、これでも希望は持てるんだけどな・・・。」


 どう考えても、これに乗って暴れるのは鈴蘭か私の役目・・・。


 とても、こんな機体じゃ施設の連中相手に、やってのけれるとは思えない・・・。


「あぁ・・・諦めるしかないのかな・・・。」


 でも、それぐらいだったら、いっそうのことこの機体で暴れまわってもいいかもしれないな・・・。


 どうせ、秒殺されるんだろうけど・・・。


「何、言うてるんや?お前たち・・・これに乗れるのは、俺だけやで。」


「はぁ?」


「ケィ・・・寝言は、寝てから言え・・・」


 ケィのギア操縦技術の成績は毎回追試レベル。


 13歳の少年にも負けるような男が何を言い出すか?


「ウソやとおもうんなら、コックピット見てみい?」


 親指で皐月のコックピットを指すケィ。


 そういわれると、見ないわけには行かない。


 私と鈴蘭は、皐月の背中部分に回ると、コックピットハッチのボタンを押す。


 ピストン運動独特の空気が抜ける音がして、皐月の背中部分がぱっくりとわれる。


 そして、そこから見えたのは、真っ赤な非常灯が照らす薄暗くて、狭い皐月のコックピット・・・。


「何・・・これ?」


 思わず、変な声が私の口から漏れた。