ギア・ドール


「お隣、よろしいですか?」


 私がふてくしたままカレーライスをいじっていると、突然、ものすごくおかしなイントネーションを持った敬語が隣から聞こえた。


 よく知っている声。


 今更、何を遠慮するか・・・。


「デートの邪魔しないで・・・ケィ君。」


 目線だけで、ケィ君をにらみつける。


「さいか・・・。」


「いいから、座れよ。ケィ。」


 くっ・・・鈴蘭め・・・。


「それは、スイマセン・・・。」


 遠慮なく、私の隣に座るケィ君。


 持ってきたメニューを見ると、私と同じカレーだった。


 まったく食欲のない私を尻目にがつがつカレーを食べ始めるケィ君。


 よくもまぁ、食欲なんて出るものだ・・・。