ギア・ドール


「先月、お前に貸した5万・・・。チャラにしてやってええぞ。」


「国を売るには、安すぎる値段だな・・・。」


 自分もそう思う。


「でも、今の俺にはお前の情報が必要なんや・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


 それを聞いて、再び黙るジン爺さん。


 グラスに注いであるバーボンを一気に飲み干すと・・・。


「・・・・・・・・・・まぁ、俺もお前たちや、このスラムには借りがないわけじゃないからな・・・。別に教えてやってもいいが・・・お前、それを簡単に信用するのか?」


 ゆっくりと口を開いた。


 ジン爺さんらしい、嫌な言い方。


「さあな?・・・でも、お前がウソを教えた時点で、俺は死ぬやろうな。」


 それは、間違いない。


 本当はキラの記憶が戻れば、そんなことにはならなかったのかもしれない。


 しかし、現実はそこまで都合よくできてない・・・。


 キラの記憶は、未だ曖昧なままだ。


「そんな同情話に俺が乗ると思ってるのかよ?」


「別に・・・ただの事実や・・・。」