「恨むで・・・菫・・・。」


 心から思った。


 どう考えてもこの状況で自分が生き残れる算段がつけられない。


 ギアには対人兵器が備わっている。


 絶体絶命・・・・・・・・・・・・・のはずだった。


「!!」


 しかし、白いギアはそんな海人の存在を無視して、空高く舞い上がるとマシンガンを構える。


 狙いは・・・・・・背中を向けている菫のギア。


 マズイ!!


「菫!!」


 叫んでみるが、聞こえるはずもない。


 ロックオンの音が、菫のコックピットの中で響いているはずだ。


 そして・・・・・・・・・・。


「!!」


 白い機体のマシンガンが吼える。


 マシンガンの発砲音が海人の鼓膜を襲う。


 耳をふさいでなければ、鼓膜が破れそうな爆音なのだが、今の海人にそれを気にする余裕はない。


 菫ギア・・・・・・・・・・・・・・被弾・・・。


 爆発音が海人の耳を襲い、爆風が海人の横を横切った。


 冗談じゃない・・・・・・・・・・。


 それだけ見届けると、立ち去る白い機体。


 だが・・・そんなもの海人の目には映らない・・・。


 全速力で、海人は皐月に乗り込むと、菫のギアの元に向かう。


 ・・・・・・・・・・頼む・・・・生きていてくれ・・・・・。


 海人は生まれて初めて神様に祈ったような気がした。