作り者

本物の姿を鏡の中に映してみると、ひどかった。
中学生の頃はもう少しマシだった気がするのに、何年もずっとアイプチをしてきたせいか、瞼の肉が伸び、たるんで見える。そして肌の色もその部分だけがくすんでいる。その為に、昔の時の目よりも、今の素顔の目の方が小さく見えてしまうし、キレイではなくなってしまった。
 そうなってくると益々アイプチなしでは生きられなくなってくる。
しかし、こんなことをずっとしているわけにもいかなくなってきた。よく考えてみても、
結婚とかしたら毎日同じ生活をする旦那の前で、一度も素顔を見せないなんてことは可能だろうか?いや例え可能であったとしても、そんなことしたくない。
疲れてしまう、という前に偽りのまま結婚しても、偽りの仲でしかないような気がしてしまうのだ。そんなの、絶対に嫌だった。
 しかしイマサラどうしろというのだ。ねぇ。雛子。どうすんの?
さっき声をかけてきた男とは違う男がまた私の後ろ当たりをウロツイテイル。
高校時代に磨きをかけたファッションセンスもヘアースタイルも、この体も、メイク方法も、きっと結構レベルが高いと思う。
 声をかける男も、簡単に手をだしてきたりはしない。
それは、軽く見られていない証拠だと、ある男友達は言った。雛は軽そうには見えないし、どちらかと言ったらお嬢様タイプの方だと。清楚な雰囲気がするんだとか。
 
 (でも、それだって偽者でしょ?)
そう思って、鼻で笑った。自分が嫌で嫌でしょうがない思いが体中をぐるぐる駆け巡りだした。こんなときは、どうにでもなれと自暴自棄に陥りやすい。
 鏡の前から逃げるように立ち去って、外へ出た。多くの人がみんなどこかへ向かって歩いている。
 こんなに大勢の人々がいるのに、同じ顔の人、同じ服の人はいない。
この中にも、私みたいな人がいるのだろうか。高校生の頃は、こんな風に考えるようになるなんて全く思ってもいなかった。そして、こんな風になるなんて思ってもみなかった。