作り者

「じゃさ、今日の帰りに早速買ってみようよ。」
「いくらすんの？」
「えっと、千円もしないよ。大丈夫。あたし持ってるから。」
「じゃ、よーこお願いね。あたしお金持ってないから。」
「あたしも。」
まぁとみぃが同時に言った。私も焦って、あたしも、と付け加えた。
「ね、どうどう？」
マスカラを塗り終えた千代美がこっちを向いて私たちにその作品をお披露目した。
「おー」全員一致の声。
その声の先には、どちらのタレントさんですか？というくらいに可愛い女の子が一人いたのだった。
（私も千代美みたいになりたい・・・・。）
　そう、その時強く思った。

　その日の午後に早速仲良し５人で、学校の近くにあるドラックストアーに向かってみた。
私たちは、皆期待に胸を膨らませていた。もし、キレイな二重になれたなら、好きな人も私を見てくれるかもしれない。モテルかもしれない。
　店へ入ってから、どこにあるのか分からなかったために、皆別々に探すことにした。
こういう場所に入るのは、あまりなかったのでなんだか興奮した。いつも雑誌で見ている憧れのメイク品が、たくさんおいてある。
　実際に使うとなると、うちの両親はうるさいし、「まだ子供なんだから」とか「色気づいちゃって」とか、そういうことを姉の時と同様言われそうで、手をだしたことは未だにないでいた。うちの姉は、そんな妹の私とは違って、中学校へ入学してからすぐにメイク品を買い揃えるようになっていたけど・・。私は、そんな姉の私物にでさえ、手を出したことはなかった。
「雛、雛！」少し離れたところから、みぃが私を呼んでいた。あった、あった！と言ってるように、棚を指差している。私は、手に取ったマネキュアを元に戻して、彼女の元へ歩いた。
「ね、これでしょ？！」