作り者

そういうと、はっとした表情で、私の顔を見ててへーと笑い、またその場に伏せた。
「そろそろ、行こうか?」
「うん。じゃ、今日は帰りますかね。」
 
 バイトは、週三日から四日間くらいのペースで働いている。美恵子とは、大学が一緒で、ここの募集も一緒に見つけ、同じ日に面接を受けに行き、二人そろって合格をしてめでたく働けることになった。
 お店の雰囲気も客層も、ユニホームも給料も、私にとって全て合格点であった。
「じゃ、あたしこっちだから、また明日ね。ばいばーい。」
そう手を振りながら、地下鉄の駅へともぐりこんでいった。私はJR線で、ここから約一時間くらいかけて地元へと戻る。今日は、平日だが授業がなかったためにお店のOPEN準備から、三時まで働いたのだった。
 さて・・今日はもうちとフラフラしていこうかな。
そう思うと、くるっと方向転換をし、大きな交差点で信号待ちをすることにした。向かいには私の大好きな可愛いもの、洋服、かばん、靴、アクセサリーなどがぎっしり詰まっている大型デパート。考えただけでもうきうきする。かわいいもの大好き!!オシャレ大好き!
「ね、なにしてんの?」
と、そこにはいかにも軽そうな美容師系の男が一人、笑顔を作って立っていた。
「別に、なにも・・」
ここで、何も言わずいられればいいが、変に邪険にも出来ず、無視することも出来ず、逃げることも出来ず、聞かれたことにはきちんと答えてしまうという、真面目なのかなんなのかよく分からないが、勝手に口から言葉が出ていた。
「一人なの?」
「はい。」
「時間あるんだ?」
「・・・まぁ・・。」
「じゃ、一緒に遊ぼうよ!」
「・・いや、いいです。」
信号が青に変わった。大勢の人が一勢に思い思いの方向に歩き出した。