作り者

それでも、人間は見た目ではないのだ。
 どうして好きになったかっていうと、晴男は優しくなかった。甘くなかったのだ。
だから好きになった。いけない事はいけないときちんと怒るし、疲れたとか止めたい、と言えば、そんな根性でどうする、と叱る。そういう事を友達に話すと、「あんたよくそれで疲れないね。」と言われるが、私にしたらそれってなんて素晴らしい・・と思ってしまう。
変に優しくされて、私の言うことを聞いてくれるよりも、ビシビシ叱って、一生懸命に生きよう!と思える方が何倍も幸せだと今の私は思うようになったのだ。
 だって一緒にいてダメになったら意味がないし、つまらない。私は、お互い相乗効果のある関係でないとダメだと思っている。お互いにお互いが影響され、レベルアップしていけることが一番良い形だと思っている。
 でも今のこの私の偽りを話したら、なんていうだろう・・。
考えるだけでもぞっとする。それでなくても厳しい人だ。こんなことをしているとバレたら、きっとものすごく怒るんだと思う。軽蔑されるかもしれない。お化粧や、カラーをすることには、晴男はなにも言わない。むしろ、チロっと見て、少し笑ってくれる。それが、ものすごく可愛くて好きだ。でも、嘘をつくこと、秘密を持つことに関しては、ものすごく怒る。これだって、小さな・・いや大きな秘密だ。
 どうしたらいいものかと思うが、今更素顔にはなれない。なりたくない。
そんな思いがいつも堂々巡りで私は心休まるときがいつからか全くなくなってしまった。
(なぁ、どうする雛子よ・・・)
 翌日は一日中が「ミウウェイ」でのバイトだった。
昼から夜までずっと働きっぱなし。さすが渋谷の休日ともなるとお客様は平日に比べ、ぐっと増える。お昼を過ぎても、お客が減る様子など全くない。さすが、ミウウェイ・・。