作り者

でも、今はもう周りに褒められれば、褒められるほど息苦しくてしょうがなくなった。
誰も気づいてはいない。私しか知らない。それでももう偽者は嫌だった。嘘は嫌だった。
（嘘が本当になればいいのに・・・・。）

　家に帰ってくると、すぐにクレンジングをする。長時間のお化粧は肌に負担をかけるために、すぐに落とすことを常に心がけている。化粧品に関しても色々と試してきた。今、ここ一年落ち着いているのがファンケル商品だ。肌が合ったのだと思うが、ずっと調子がよくいられる。そして、私の今の生命線・・・といってもおおげさでないこのライン造る商品は、結局、中学生の頃初めて使ったものが色々試した結果、一番良いということが分かった。
　ポンプ状になっている半透明の高さ十五センチくらいのボトル。軽く二回押し、手の平の中央に取る。それを瞼から優しく円を描くようにして徐々に徐々に範囲を広め目元からしっかり落としていく。それからおでこ、頬、顎をこれまた円を描くようにしながら優しくマッサージしてお化粧を落としてゆく。
「あ・・」
また、生まれた。やぁ、こんにちは。本物ちゃん。
　はっきり言って、可愛くもなんともない。これじゃ、私の持っている鮮やかな服も、派手なヘアスタイルも、きっとなにも似合わない。つまらない・・・。
　やぁ・・・・。ねぇ、あんたは誰？
鏡の中の自分に、また問いかける。
　ねぇ、雛子はどこ？本物の雛子はどっち？
一日、外にいるときはアイプチで過ごす。それこそ１０時間近くだ。下手したら、そっちでいる方が多いかもしれない。そうなると、どっちが雛子なのか分からなくなる。
　私の知っている雛子。みんなが知っている雛子。
それは違う雛子だ。みんなは知らない。私のことを・・・。

「ただいまぁ。」いつもならまだ帰らない姉が今日は珍しく帰ってきたよう