「あら郁、おかえり」

騒ぎが収まったあと、お母さんが悠然と台所から出てきた。

お母さんはいくら郁おねえちゃんが突拍子もない時間に帰ってきても動じない。


朔のクールな性格は間違いなく母譲りだろう。


「ちょうどいいわ。お父さん起こしてきて」


はーい、と元気の良い返事を残し、寝室へ駈けていく郁おねえちゃん。



やがてお父さんの悲鳴が聞こえてきた。



………御愁傷様です。




私が心の中で合掌していると、お母さんがふとこちらへ顔をむけた。


「あら、向。ずいぶん余裕ね??」



ん????
余裕?????



私は恐る恐る時計をみて、文字通り飛び上がった。


はちじじゅうごふん!!!!!!!!



「郁姉とじゃれてっからだ」


しれっと言う朔。



私はそんな朔に言葉にならない叫びを返し、家を飛び出した。