「おばあちゃぁん!!おはよー!!」
なんとか石段をのぼりきった私が声をかけると、境内を掃いていたおばあちゃんは顔をしかめた。
「私より先にご守護様に挨拶って何度言ったらわかるんだい」
私ははぁいと首をすくめ、お社に向かった。
うちの一家はここでまつっているモノをご守護様と呼ぶ。
正直何をまつっているのかよくわかっていないそうだ。
なんて適当一家。
だけどこのご守護様、占師の夢にはよくでてきて他愛もないおしゃべりをしたりするらしい。
一家も一家ならご守護様もご守護様である。
私が挨拶を終え、顔をあげた瞬間何かが私にぶつかってきた。
ぐぇ、と女の子とは思えない声をあげた私にお構い無しにその人物は私を抱き締める。
「向−!!ここにいた−!!」
「…郁おねえちゃん」
笑顔をひきつらせて無理やりひっぺがすと、彼女はきょとんとした顔で私をのぞきこんできた。
「なに怒ってんの、向」
「会うたびタックルすんのやめてって言ってるでしょ!!!!」
彼女は私の姉、郁(いく)。
大学3年で一人暮らしをしており、時折不意討ちのように帰ってくる。
だからってこんな早朝に帰ってくるとは…私の姉、やっぱりただ者ではない。
「言ったっけ、そんなこと」
「言った!!」
「そ??まぁいいじゃん、そんなこと」
うう。
私の訴えはいつもまぁいいじゃんでながされる。
郁おねえちゃんはぱんっと手を顔の前でつき、頭を下げた。
「一生のお願いっ!!まじなってほしいの!!」
「またぁ!?!?」
私は思わず大声をあげた。