夕方のせいか、人はまばらだった。明らかに観光客とわかる者の方が多い。
雪で滑る長い階段を登り切るころには、背から橙色の光が差してきた。
階段先の開けた広場には、自刃した白虎隊士たちの墓所がある。
せっかくきたのだから、お焼香ぐらいはしていかないとならないだろうと思い、隅に置いてある線香を購入した。
「ありがとな」
そう言って差し出された老婆の手から、元博は釣りを受け取った。
「兄ちゃん、会津ははじめてがよ?」
「うん」
「そうか、こんな時期にご苦労さんだなし」
老婆の訛りに自然、口元が緩む。
誰かさんのせいでここまで来る羽目になったとは、到底言えない。
「せっかくだ。ちょっと話でも聞いでがんしょ」
老婆はそう言って、墓所の方に歩き始めた。元博はその後に続く。どうやらボランティアガイドらしい。