四五六は灰皿を手元に手繰り寄せ、葉巻を吹かした。
重い話をするとき、四五六が葉巻を咥え始めるのは、いつものことだった。
「年を取ることはない。だから、体が年とともに悲鳴を上げることもない。・・・もっと言えば―――下手すりゃ彼女は永遠に死ぬことはないかもしれない」
「・・・不老不死・・・ってヤツですか・・・?」
そんな言葉が頭を過ぎった。
人類が太古の昔からずっと夢見てきたもの。どんな人間でも叶えたことのない、泡沫の夢。
それを彼女は、手に入れている。
「だから・・・お前が彼女を好きなら、お前は彼女は変わらずに、自分だけがどんどん変わっていくのに、苦しまなきゃならない。彼女もお前を好きなら、お前がいつか必ず、自分より先に死ぬという現実と向き合わなきゃいけない。―――・・・そういうことだ」
目にしみるはずの四五六の煙草の煙も、なぜかこのときだけは気にならなかった。
そういえば、この間見た映画は、恋人が自分を残して先に死んでしまうんだった。
その真逆って、これは映画のネタとしてはありなんだろうか。