投げ捨てた。
 走り回っていたら、何でも屋の看板があった、その業務内容に、『引越致します、真夜中でもOK』と読めて、店に飛び込んだ。夜の町にはこういう商売が成立するのだ。
 母親とは離れた別棟の、元自分の部屋に荷物を運んだ。足の踏み場がなくなった。肩で息をして、立っている朱鷺を、由美子が声をかけず手を引いて、自分の部屋へ連れて来た。
 この間の残りの焼酎を出すと、朱鷺はラッパ飲みした。もっとないの!と叫んだ。もう、料理用の日本酒しかない、と台所の下を見ていた由美子を押しのけて、一升瓶をこれまたラッパ飲みする。
 ぶっ倒れて、吐いて吐いて、転がって、また吐いて、胃液も吐いて、吐くものがなくて、のたうちまわって、死ね、殺せ、殺してくれ、とわめきながら、やっと朱鷺は静かになった。


 目が覚めると、知らない大きなベッドの上だった。頭を上げようとすると、猛烈な吐き気がまた襲った。うーーーーーー、口を押さえて腹を押さえて唸る。目の前に洗面器が出てくる。由美ちゃん・・・・そうだ、俺は由美ちゃんちにいたんだ。


 朱鷺が起き出してこられたのは、夕方だった。由美子が差し出したポカリを飲んだ。
 テーブルには、おにぎりと卵焼きが皿にのっている。その横にやかんとマグカップが置いてある、中身はウーロン茶だった。煙草と灰皿もTVのリモコンの横にあった。
 由美子は、朱鷺からしゃべるまで、大きな机に向かって、パソコンをたたいていた。

 「由美ちゃん、ごめんね・・・」