ね・・・ごめんね」
 また、コイツは自分からあやまる。なんにも悪いことをしてないのに。朱鷺はにじんできた涙を、もう止められなかった。
「俺が悪いんだ、俺が浮気したんだ、俺が悪いんだ、真理は悪くない、あやまらないでくれ」
鼻をつたう涙を見て、朱鷺は自分が情けなかった。向かいのソファーに座っていた真理は、立って朱鷺の前に膝をついた。
「・・・朱鷺君、さわっていい?」
真理も泣いている。朱鷺が、声を出せずうなずく。
真理が、朱鷺の頭を撫でる。
「・・・泣かないでよ、朱鷺君、どんなことがあっても、朱鷺君が好きなんだもん」
「なんで、怒らないんだよ。責めればいいだろう」
逆切れである、声は弱いけど。
「責めたら・・・朱鷺君戻ってきてくれるの・・・・・?」
一気に真理の涙があふれて、肩を揺らして泣き出した。
「朱鷺君、好きだから、、好きだから、朱鷺君を責めたくない、ののしりたくない、怒っている顔を朱鷺君に見せたくない」
力を込めてしゃべらないと、声にならないから、真理は計らずも怒ったような声になってしまった。しゃくりあげながら、笑顔にならない顔で続ける。
「で、でもよかったじゃん、大好きな人だったんでしょ、その人と再会して巡り会って、結ばれたんでしょ、朱鷺君、幸せなんでしょ」
「馬鹿!もう言うな!」
 ガチッ、と歯がぶつかった。口をふさぎたかった。痛さがわからない。
 朱鷺は、はぎ取るように真理を脱がせた。こんな時に、別れ話にきたのに、俺って奴はなんで、なんで、そんな気になるんだ、見慣れていたはずの真理の肌が、きれいに見える。
ずるいな、なんてずるいんだ、今になって手離すのが惜しくなった、今でも、なんで両方好きじゃいけない