チラチラと聖治を盗み見ては、口を開こうとして躊躇い続けること数分。
というのもさっきみたいに聖治が冷笑を浮かべたらと思うと…
流氷の海に投げ出されかねない…


けど、いつまでこうしてるわけにもいかない。
とは思ってみても言葉が出てこない。
仕方なくもう一度、盗み見ようと視線を送ってみれば、聖治が俺を見つめていて、がっちりと視線がかち合った。

しまったと思ったが、もう遅い。
とにかく謝るしかないと、謝罪の言葉が咽まで出掛かった瞬間に、聖治の口から言葉が漏れ出した。


「…まだあの子に未練があるの?」
「……はっ?」

見当はずれの言葉に一瞬、反応が遅れた。

「まだ好きなんじゃない?」
「…バカなこと言うな」
「じゃあどうしてあんな事されて拒まなかったの」

聖治が悲しげに瞳を揺らめかせた。
俺は聖治のそんな顔を見て、心臓を鷲掴みにされたみたいに苦しくなる。

頼むからそんな顔しないでくれ…
聖治が心配することなんて何ひとつないんだ。