「そういえば知ってる?モエが結婚するの。」
「…へぇ?知らない。誰と?」
「グラフィックデザイン科だった2つ上の先輩だって。3年前から付き合ってたらしーよ。水臭いよね、私たちに教えてくれないなんて。」
会話から、大学の友達なんだとわかったけど…先生の声が少し変わったこともわかった。
モエさんが結婚することに驚いただけじゃない。
なんていうか…
「へぇ…」
「あ、えっと式はね…たしか10月の初めくらいだったよーな。また電話する!」
「てか、俺関係なくね?」
「そう?あんなに仲良かったのに。ね?」
「うん。あたしも千葉君と付き合ってるんだと思ってたもん。」
「はは。残念でした~。」
私、目の前の緻密に仕上げられたブロンズ像より固まっていたのかも知れない。
梨絵に頬を突かれて現実に戻ってきた。
「宮?大丈夫?」
「え…あ、うん。平気。ごめんね。ボーっとしてた。」



