美術室の窓から~dear先生~



「宮!おはよ!」


バス停には、梨絵がわずかな木陰で待っていた。


「おはよ!暑いね…」


汗をかきたくないのに、歩くだけでも汗ばむ陽気。


梨絵は相変わらずショートボブの元気っ子スタイルで、デニムのショートパンツに重ね着のタンクトップはビビッドピンクとラベンダーの配色。半袖のパーカーはタオル地で、このまま海に行けそうな感じ。


「梨絵カワイ~!」


「何言ってんの!宮こそカワイ~よ!似合ってる!」


私たちって見た目キャラは違うのに気は合うんだなぁ…と思っているとバスが来た。


いつも買い物に向かう海側の市街地とは逆の、山側へ向かう。


山側には地下鉄が通っていて、地下鉄と言ってもこの辺り郊外は山と谷が交互にあるから、谷にあたる駅は地上…しかも高架。


駅でバスから地下鉄に乗り換える。


目的地のアートホール港っていうギャラリーは9つ目の駅。


私たちの住む場所は、市の中心街より隣の市の中心街の方が近いから、中学生の私は滅多に行かない。


約30分は、冷房の効いた車内で梨絵とのおしゃべりであっという間に過ぎた。