「おはようございます。」


職員室に入ると、先に出勤していた植村先生が俺と、俺の持つ向日葵を見てニヤリと笑った。
挨拶をするまでもなく第一声が


「ウチの宮崎ですか。」


あれ…見てたのかな?


「あ…はい…。今日僕、誕生日で…美術部の子達からのプレゼントだそうです。」


「千葉先生、今日誕生日なんですか。それはそれは…」


俺は机に荷物を置き、職員用の台所へ花瓶を探しに行く。


こういうのって、確かあんまり良くないんだよな…?

バレンタインも校内に不用品を持ち込むことになるから禁止だと聞いていた。

教師の誕生日なんかにプレゼントをくれる生徒だなんて…。

小学生が手紙や図工作品を渡す事くらいならともかく、中学生になったら滅多にいない。

たまにいても、それは憧れの様な好意でのこと。

俺の中学時代にもいたけど…モテる先生に群がる女子生徒。

純粋に好意だとしても周りは色んな推測をする。

だから、『美術部の子達』と念の為に付け加えた。


「千葉先生…でも、気を付けて下さいね。」


朝練の準備が整って、グラウンドに出る植村先生が立ち止まって言った。


「え…?」


「特に三木先生は厳しいですから。宮崎は私のクラスの生徒ですから、何かあれば教えて下さい。」