Cold Phantom [前編]

ハーフなのは言うまでも無さそうだ。
名前と容姿ですぐに解る。
人種の違いからだろうか、分け隔て無い性格に好感が持てる。
「大家さんは何してたの?」
「ん?庭の掃除だよ。案外大変なんだよこれが…」
「まぁ、それ以外はあんまり仕事無さそうだけどね。」
「なんかその言い方、私が暇人みたいな言われようじゃないの。まぁ当たってるけどさ。」
そう言って小さく微笑んだ。
「それじゃ、暇人は暇人らしくお昼寝でもしようかなっと。いつまでも若い子の恋路を邪魔するほど空気読まない女なんて思われたくないからさ。」
そう言ってこちらに背を向けながら手を上げさよならがわりに軽くふった。
その姿もまたやる気の無さを助長するかの様なゆっくりな歩き方で自分の部屋に入っていった。
そして扉が閉まる、かと思いきや…
「あ、そだそだ。回覧板あるから目を通しといてね。」
と、閉まりきる直前でまた開いた。
「うん、解った。後で見とくよ。」
「よしよし、それじゃ今度こそおやすみ。」
言いながら扉の隙間から手を出してまた小さく振る。
そして手を引っ込めると同時に扉が閉まった。
意外と律儀な人の様だ。
「今の人が大家さんね。」
「みたいっすね。」