Cold Phantom [前編]

澄んだ空色の瞳と地毛と思われる栗色のセミロング、整った顔立ちの身長の高い女性だった。ここら辺では珍しい他国の人だろう。
「あっ、大家さん。」
「よっ、祥子ちゃん。珍しいねこんな時間に帰ってくるなんて、彼氏と学校抜け出して来たとか?」
大家さんが楽しげにそう先輩に言うのだが、その先輩は…
「ちょっと体調崩して、早退しちゃってね。」
と、素で返す。
その大家さんも「なるほどね。」と一言だけ呟くと、今度は俺に視線を向けてきた。
「んで、こっちがボディーガード役の彼氏さん?」
目線はそのままにまた先輩に問いかけていた。
どうやら彼氏として扱いたい気だ。
「もう、たまに早く帰ってきて人をつれてきたらこれなんだから…。」
「だって珍しいじゃないの。祥子ちゃんが男の子連れてくるなんて。多分初めてじゃないかな?」
にやにやした顔でその大家さんは俺から視線を外さなかった。
「それで、彼氏の名前は?」
「え、えと、猿川浩彦って言うっす。」
「猿川君ね。ちょっと珍しい名前だね。私は小野マリア(おのまりあ)気軽にマリアちゃんって呼んでよ。」
「は、はぁ。」
何だか、そのマリアさんの対応に少しばかり気後れしてしまう。