Cold Phantom [前編]

演奏は終盤になり、終わった後で拍手の音に紛れて声がした。
「猿?…おい猿!?どうしたんだ、おぃ!?」
里村の声がまるで遠くに聞こえた。俺は何も考えられずただなすがままに身を任せていた。

『ヒロ君…』

最後にまたあの声が聞こえた。
何だかとても懐かしい響き…でもそれだけだった。
懐かしいなんて何で思ったのか自分自身分からない。聞いたことも無い声なのに…。