Cold Phantom [前編]

でも、何となく自分には一番合ってる性格かも知れない。
垢抜けた性格と俺の性格とはとても相性が良い事を俺は良く解っている。
「良い顧問だな、垢抜けて。」
里村のそんなセリフに…
「全くだな。」
と淡々と返した。


吹奏楽顧問の自己紹介は3分程続く長丁場だったが、顧問自身の軽い性格故に飽きる事は無かった。
聞いていて楽しいナレーションだった。
そして…
「おっと、長々喋り過ぎて他の先生のブーイングが来そうなのでそろそろ演奏を開始しようかな。」
と締めくくってはいるが、その他の先生からは笑みが溢れていた。
どうやら先生の間でもムードメーカーな先生のようだ。
吹奏楽顧問は話を終えると指揮棒を取り出し後ろの垂れ幕へ向きを変えた。
「いよいよか…」
俺は少し真顔になった。
槍倉北の吹奏楽部は地域レベルで有名な部活と聞いたことがある。
去年の県内の大会でも堂々の金賞を取る程の実績があり、何十年も前には全国大会までのし上がる輝かしい歴史がある。
そんなバンドの演奏なのだ。期待しない訳がない。
そうこうしているうちに照明は消され垂れ幕が上がり出した。