Cold Phantom [前編]

「そんな事よりとっとと始めよう。紗冬美御令嬢様も御機嫌が悪い様だし。」
「そうね、良い事言ったわ和樹、まだ本題に入ってすら無いのに夫婦喧嘩見せられて…まぁ見てて楽しかったけどね。」
紗冬美までその場の雰囲気を楽しんでいた様だ。
紗冬美も反応はクールだが、気姿月君が二人の話に介入する場面を見るのが実は好きだったりする。
見た目と違い少々意地悪なのだ。

かくして会議は始まり、全員で机を囲んだ。
議題は「クラブ発表会で使う曲目について」だった。
部長は過去に演奏経験のある曲の中から選び抜いた大量の指揮用の楽譜を持ち出して皆に見せ始め、その中から1曲を選ぶ事になっていたのだが、(誰でも知っていて、かつ聞きやすい曲を選ぶ)と言うコンセプトが皆同じだった様で、殆ど話し合いでゴタゴタする事が無く会議は終わった。僅か15分の会議だった。
(部長の呼び出しくらい知れてるわよ。)
みーちゃんが言っていた事が良く解った気がする。