Cold Phantom [前編]

「おいおい、今日も昼間っから熱い夫婦愛を発散するなよなぁ、あ~ぁ、熱い熱い。」
「うるさいなぁ、変態は黙ってなさい。」
「昼間から肌と肌を合わせて人前で愛し合ってる人には言われたくないなぁ~。」
「ちょっ、そんなんじゃねぇ!?」
「ちょっ、そんなんじゃない!?」
…見事にハモった。
そのハモり様に驚いた本人達はそそくさと離れてツンとお互いの顔を背けた。
「と、とにかくその名前は止めてよね。私のイメージが危ぶまれるから。」
「お前もこれからはその名前は止めろよ。」
と二人の喧嘩が収まるのを確かめると、喧嘩を止めた本人は軽い微笑みを浮かべながら二人を眺めていた。
「お前らも相変わらず頑ななやっちゃなぁ。飽きずに喧嘩ばかりするんじゃなくて、とっとと付き合っちまえよ。今なら誰も邪魔しないで二人の仲を認めてくれるぜ。」
「そ、それどう言う意味よ和樹!」
「お前らなぁ…。」
私とはまた違う意味で呆れかえったようだ。
二人の喧嘩を一刀両断したこの男の子の名前は気姿月和樹(きしづきかずき)。
落ち着いた雰囲気を醸しながらもどこか侮れない存在感がある男の子。