Cold Phantom [前編]

たけ君とお別れし、とっくに過ぎた集合時間も全く気にせずにみーちゃんは集合場所の「特別棟会議室」のドアを開けた。
とっくに過ぎたと言っても2、3分過ぎたくらいの遅刻だったせいか許容範囲だと言ってみーちゃんは気楽に入っていった。
そこには毎度お馴染みな顔ぶれの3人が長方形の机を2つならべて四角形の形を作り待っていた。
その内の一人が私たちを見て少し怒鳴る。
「二人とも遅刻だぞ~。時間通り来てくれよなぁ。」
っと、気の抜けた怒鳴りをあげたのは今年からの吹奏楽部部長、湯川有文(ゆかわありふみ)
私たちの同級生で、同じく入学して真っ先に入部した男の子。
彼とも今年で3年目の付き合いになり、気の軽い友人として部活を盛り上げてきた。
顔は部活内の誰もが認める美形、いや部活内に止まらず学校内でも1、2を争っても良いくらいの美形、長身で顔つき良しと2拍子は整っていた。ただめんどくさがりなのか髪のセットや服装等の身嗜みが悪く、せっかくの美形を自分自身で台無しにしていた。本人自身が美形である事を言いふらさない辺りは良いのだが、それもまた単に自分自身が美形である自覚がまるでないからだろう。