Cold Phantom [前編]

「簡単な事だよ、正直に言えばいい。」
「う…」
俺の言葉に再び不安げな表情を浮かべる姫ちゃんだったが、俺は構わず続けた。
「大丈夫だって、あいつはそんなに柔な奴じゃない。ちょっとやそっとの事くらいなら姫ちゃんを抱き止めてくれるって。それに…」
俺は自分自身に指を差した。
「人と付き合うのが怖いって言いながら俺や美咲、和樹や紗冬美とも友達として付き合ってるじゃないか。少なくとも俺はそう思ってるぜ。」
「…」
「姫ちゃんの本音は寂しがりやって事だよ。」
「寂しい…」
姫ちゃんはそう呟くと中々合わせてくれなかった視線を合わせた。
「…そっか、私は寂しがりやなんだね。」
自分の存在を改めて知ったかの様なそんな一言に俺は呆れながらも姫ちゃんらしいなと感じた。
「そんな寂しがりやな姫ちゃんに拒絶は似合わないよ。ほらっ、行ってこい。」
「え？」
「猿の元にだよ。まだ間に合うんじゃ無いのか。」