Cold Phantom [前編]

※※

ある日の夜の事だ。
私はふと目が覚めて布団から起き上がると長池先生が心配そうに私を見ていた。
「大丈夫か？」
「えっ？」
私は先生のいきなりの問いかけに私は混乱していた。
それよりも私が気になったのは…
「先生、傷だらけですよ。何かあったんですか？」
「えっ！？」
今度は先生が驚いていた。
言葉通り先生の整った顔が少し腫れ上がっいたり引っ掻き傷などが目立っていた。
しばらくの沈黙を破ったのは先生の弾かれた様に発した言葉だった。
「あ、あぁ…これはプライベートでついた傷だから気にしないでいいよ。」
と先生は言うが、何だか腑に落ちない対応なのは言うまでもなかった。
「何かあったんですね。」
「別に何でも無いよ。」
「でも、さっき大丈夫かって…。」
「あ、いやその…寝苦しそうだったからさ。」
言いながら視線を外す。
相変わらず嘘が下手な先生だった。
「…。」
でも嘘と解っていても私は真実を聞こうとしなかった。
嘘をついてる先生は真実を頑なに語らない事を私は知っていたからだ。