Cold Phantom [前編]

「先輩?」
「だからせめて、ありがとうって言わなきゃいけない様な気がしたんだ。ヒロ君の告白に応えてあげられなかったから…。」
先輩はパッとこちらに向き直りそう言った。
相変わらずの涙顔だった。
「ごめんね…。」
「えっ!?」
「私、やっぱり最低だ。」
そう言って先輩は突然走り出した。
慌てて俺は先輩を追いかけ、アーケードを少し離れたところでようやく先輩の手を掴んだ。
しかし…
ペシっと小さな音をたてて俺の手がはたかれた。
「!?」
「はっ!?」
先輩は自分のその行動に驚き振り向いた。
「ごめん…。」
それだけ言って先輩はまた走り出した。
俺は先輩にはたかれた手を擦りその後ろ姿を見ている事しか出来なかった。
収まりつつあった小降りの雨の下、ただ立ち尽くした。