Cold Phantom [前編]

「この場所で、始めて祥子と出会ったんだ。」
店を出て、駅のロータリーにあるベンチの前で先輩はそう言った。
「えっ…学校とかじゃ無くてここでッスか?」
「うん。私ね、中学の頃ストリートミュージシャンってやつだったんだ。」
そう告げると、先輩はその頃の事を語り始めた。
始めた頃の話、挫折仕掛けた時、そこに現れた祥子先輩。
先輩はそれらを手短に言った。
「そんな事があったんッスね。」
「うん、それから祥子と仲良くなった。それでね…実はここからが本題なんだ。」
「えっ?」
本題…?
俺は先輩の思わぬセリフに声を発した。
みーちゃん先輩は俺が祥子先輩を好きである事を確かめる為に呼んだのだと思った。
いや、それもあるかも知れないが多分みーちゃん先輩が一番言いたい事を、祥子先輩に対する決意表明の影すら薄くなるような事を今から言うのだろう。
みーちゃん先輩は目を瞑り深く深く息を吹いそして吐いた。
目を開き先輩は言った。
「本当はね、言わずにいられたら言わないかった事だけどね。」