Cold Phantom [前編]

夕暮れも深くなり、西に進んだ太陽がゆっくりと山に飲み込まれていく…
すっかり夕闇に溶け込んだ空を見上げながら、俺は思わぬ場所に歩を進めている事を不思議に思った。
通り過ぎる電車を見送り、遮断機が上がる。
そこを過ぎるといつもバイトで向かう場所、槍倉駅に着く。
その駅前には小さなロータリーがあり、そこから駅に向かい合う様に槍倉商店街があった。
バイト先からそう遠くないそんな場所に…
「おっ、意外と来るの早いねぇ。」
みーちゃん先輩はいた。
先輩は駅を出て直ぐの場所にいた。
「先輩、これのどこがシフト表なんッスか?」
「シフト表なんて言ったっけ?」
先輩のその一言に俺は少し肩が下がった。
そんな先輩が寄越した紙には…
「寄越したって、何か果たし状みたいな言い方するなぁ…。」
「先輩、狙ってたっしょ。」
「ちょっと位茶目っ気がある方が良いかなって思ったんだけどなぁ。」
「それでこれですか。」
と先輩に「今日の放課後、駅前にて待つ」と書かれた紙を見せた。
ボールペンの丸文字で書かれていなかったらそれこそ本気で果たし状にすら思えた。