Cold Phantom [前編]

「たけは数時間前にしていた大切な約束を忘れてしまう事ってあるか?」
「は?…いや待て待て、まったく話が読めない。」
「深く考えなくて良い。」
そう言って聞かせたが、よく分からないとばかりの表情をするたけ…分からなくもないが。
「何があったか良く解らんが…とりあえず言えることは、忘れてしまうくらいの約束だったら内容も薄いって事だろ。」
たけはそう答えた。
確かに、誰でもすぐにたどり着く答えだ。
俺はそのたけの言葉に適当に返事をした。

家路を歩いてからしばらく、たけと別れ家の近くまでたどり着いた時、俺は何となく鞄を漁り目的の物を手にした。
それはみーちゃん先輩から貰ったシフト表だった。

-シフト表。ヒロの名前も入ってるから家に帰ってから絶対に見といてね。それじゃねぇ。-

ふとみーちゃん先輩が言った言葉が気になった…。
その言葉の中のとある1フレーズが気にかかった。

-家に帰ってから絶対に見といてね。-

(家に帰ってから…。)
気にしすぎなのかあまり深い意味は無いようにも思えた。