Cold Phantom [前編]

そしてその言葉の意味をすぐに知る事になるとは…その時の俺には想像出来なかった。

「よし、それじゃ明日からお願いね。」
そう言って面接が終わった。
開始から終了までの間、僅か５分…
「え？あの、終わりですか？」
里村はそのあまりの呆気なさに拍子抜けした。
その５分の間にやった事は、まず自己紹介から始まり、その後は仕事の役割分担、（ちなみに里村がウェイターで俺が調理と皿洗い、里村みたいなイケメンなウェイターが欲しかったらしい。）
のみだった。
「うん、これで終わり。あぁ、明日から仮のシフトはそこに張り出しておくけど、土日は…二人とも部活だっけ？」
「部活あるッスけど、昼頃までッス。」
「と言う事は美咲達と同じって事ね。」
言いながらボールペンを走らせていた。
時給等や勤務帯等の話が終わっても結局１０分も掛っていない。
なんと言うか堅い空気を全く感じない面接だった。
更には…
「時給安いけど、こっちもいっぱいいっぱいで苦心の上に決めた金額だから少なくても許してね。」
と店長直々にそんな事を言う始末。
何だか色々と凄い人だ…
失礼と思いながらも素直にそんな事を思った。