Cold Phantom [前編]

「何か、目標が無いみたいな言い方だな。」
「あった…だな。」
「あった?」
俺は里村に聞き返した。今は無いと言う事だろうか…
里村は先ほどから持っていたコーヒーを少し飲んだ後、テーブルに置き話を続けた。
「俺もな、昔はあんまり頭の良い方じゃ無かったんだ。そのせいか結構馬鹿にされてさ、悔しいって思い始めた頃から勉強をするようになったんだ。誰よりも天才になってやるって。」
「何か…凄いなそれ」
「そうか?」
「少なくとも俺には無理だな。馬鹿だって言われても自分で納得してるくらいだし。」
「あぁ、何か納得。」
里村は笑いながら納得されたようだ。否定してくれとは言わないが少し悔しい気がした。
今更だが…
「でも、それなら勉強で他に差をつける事自体がお前の目標じゃないのか?」
「目標があったって言ったろ。何だか、それに対しての熱意と言うか、意味を見いだせなくなった気がしている。」
「ふーん…」
俺は机の上に盛られたビスケットを一枚つまみ、口に放りこむとその里村の話に一つ感想を述べた。
「それってさ、いわゆる'満たされた'って奴だよな、単純に。」
「満たされた?」
俺はもう一枚ビスケットをつまみ頬張りながら続けた。