Cold Phantom [前編]

12月…中学生活最後の冬休みに入っても俺達の勉強会は続いた。
流石にこの時期になると里村も自分の勉強に集中する事が多くなり、教えるくれる事も少なくなってきた。しかし、それでも俺達の受験勉強に付き合ってくれるその義理堅い性格には頭が上がらない気持ちになる。
そんな事を思っていたせいか、こんな事を聞いた事があった。
「なぁ、里村…」
「ん?解らない所でもあったか?」
「あぁ悪い、大した話じゃ無いから手を止めずに聞いてくれ。」
「解った。」
里村は言われた通り勉強を始めた。それを見て俺は再び話を始めた。
「里村、前から一度聞いてみたかった事があったんだ。」
「聞いてみたかった事?」
「自分の受験の事もあっただろうに、なんであの時に手伝うなんて言ったんだ? 赤の他人だったのに。」
「あぁ、その事か。」里村は少し手を止めた。手元にあったコーヒーカップを手に取った後に、コーヒーを飲む前に話を続けた。
「困っている人は助けたくなるのもあるけど、それ以上に羨ましかったんだ。」
「羨ましい?」
「目標があって学校を北高にしたんだろ。色々難しい難題なのに目標の為に迷わず進んでさ…凄いなぁと思って、とても羨ましかった。」