Cold Phantom [前編]

俺がそう言うと先輩はびっくりした顔で言った。
「意外とヒロ君って鋭いんだね。」
「す、鋭いッスか?普通の判断だと思ったんッスけど。」
「私なら聞いてたかも。空気を読むのって苦手な方だし。」
そう言って、また大人の笑顔を漏らす先輩。
体つきに反してそのギャップが逆に好きだったりする。
「3つ目は怖かった…かな。」
「え?」
思わぬ返答に俺は訳が解らず、声をあげた。
そんな俺に先輩はまたまた一息つくと、話を続けた。
「私ね、2ヶ月に一回のペースで検査してもらってるんだけど…その検査が私にはとても怖いの。」
「…嫌、とかじゃなくて?」
「嫌だけどそれ以上にね。」
言いながら先輩はコーヒーカップを両手で持ちそれを見ながらゆっくりとまたため息をついた。
その姿にまた「そうッスか…。」と一つ憶えの様に返した。
正直、何を言えば良いのか解らない。
でも先輩からすると隣に誰かいてほしいと思っていたのかも知れない。
怖い事があれば誰でも思う事だと、自分も良く解っているつもりだ。
…誰よりも解っているつもりだった。