Cold Phantom [前編]

まだ先輩の部屋に入って20分位しか経っていないが、結構な時間がたった様な気がした。
「先輩。」
「ん?」
コーヒーが無くなってから無言になりつつあった空気を絶つようにして俺は先輩に一つ質問した。
「先輩って一人暮らしなんッスか?」
俺がそう聞いた時、先輩はおかわりしていたコーヒーカップに手を当てて止まった。
気のせいか少しだけ表情に翳りが見えた気がした。
「うん、高校生になってからは一人暮らししてるよ。遠い所から来たから交通が不便だったし。」
「そうッスか。」
俺はそれだけ言って話は続けなかった。
決めつけは良くないとは思うが、先輩の表情に若干の焦りがあるように感じて何か訳ありの一人暮らしに思えたからだ。
まぁ…それは構わない。
本当に言いたいのはそこじゃない。
でも、言い出して良いのか解らず何も言えずじまいだった。
だが…
「病院の車の事、何も聞いてこないんだね。」
話を切り出してきたのは先輩の方からだった。