Cold Phantom [前編]

何か考え込んだ表情を一瞬みせたヒロ君だったが…そのすぐ後に。
「あぁいや、何でもない。」
と何かを隠すかの様にそう言った。
今確かに何かを考えていた表情だったけど…たけ君は長い付き合い故かあまり気にしない様子で話を続けた。
「そっか、まぁそれはそれで良い。お前の恋路を邪魔するつもりはない。」
「いや、だから…話を勝手に…」
「その恋、俺が全力を持って応援してやろうマイブラザー!」
「たけ、キャラ変わってるぞ。」
「だが猿!これだけは先に言わせてくれ。」
「?」
たけ君はヒロ君の前に立って一言ボソッとこう言った。
「裏切り者…」
「お前なぁ…」
そんなコントのようなやりとりを横目に私は小さく笑ってしまった。

「あっ、来ましたよ先輩。あの子が猿川君です。」
部室が目前に迫った時、そう言って湯川君を呼んできたのは犬塚さんだった。
湯川君もヒロ君に興味を持っていたのか、犬塚さんに誘われるままに私達が来るのを待っていたようだ。