「そっか…アリガトね、薫子サン」


「何かあったのか?…まぁ、私には関係ないけど…」


「ははっ。ハッキリ言うね、気に入ったよ、薫子サンの事」


「それはどうも。じゃあ、また会える?」


「あぁ。今度は俺が探しに行ってあげる」


俺のポッカリと空いた心の隙間を埋めてくれそうな気がする。


「待ってるよ。こんな事言ったら変かもしれないけど…私はね、桜になりたい」


「俺はなりたくないね。桜は脆くて儚すぎる」


「悲しいね、そういう考え方。確かに脆いけどさ、一瞬で人を魅力する。どんなに時が流れても、毎年、楽しみにしてくれてる人が居る。そんな存在になりたいんだよ…。

じゃあ、これから仕事だから、またな」


薫子は立ち上がり、俺を残して歩き出した。


残された俺は、桜の枝を折り、空にかざして見つめた。


桜みたいな存在か…。