木々から溢れる眩い光に誘われて
見上げれば一面に桜色の空。


散りゆく花びらが
頬をそっと優しく撫でた。


「お兄さん、火、貸してくれない?」


公園の桜並木の下の芝生に寝そべっていたら、突然、顔立ちの綺麗な女に話しかけられた。


女は俺の真横に座り込んで、煙草を出すと、俺がライターを差し出すのを待っている。


「火、点けてあげるよ」


「それはどうも」


彼女の薄い唇に煙草がくわえ込まれ、俺は起き上がり、すかさず火をつけた。


煙草、俺も吸おうかな。


桜の木々を眺めていたら、ヘビースモーカー気味なハズの俺が、煙草を吸う事さえも忘れていた。


儚く散る姿が、俺のようだと重ねて見ていたから―――……