芽衣ちゃんに別れを告げて、
あたしはタクシーに乗り込んだ。
「中野までお願いします。」
「かしこまりました~。」
タクシーの中であたしは大きなため息をついた。
さすがに疲れちゃった。
こんな時間まで遊んだの、いつぶりだろう・・・。
でも楽しかった。
あたしはまた新しい世界に一歩足を踏み込んだ。
でも、正直、あまり深く踏み込みたくない世界。
芽衣ちゃんは本気だ。
・・・でも健二君は?
はたから見れば仲のいい二人。
でもあのテーブルにあったボトルは、総額幾らなんだろう?
お金で愛を表現するって
あたしには理解できない。
あたしは窓から歌舞伎町を眺めていた。
「あれ、お客さん、二回目ですね。」
「え・・?」
「何ヶ月か前に、見たことありますわ。お客さん乗せようと思って止まったんだけど・・・ホストのにーちゃんが乗っちゃったんだわ。」
「え?よく、覚えてますね。すごい偶然。」
「お姉ちゃん可愛いから、忘れないよ!
あのにーちゃんも、車んなかで、めっちゃ悪いことしたって、反省してましたよ。」
「そうなんだ・・・。」
「なんか、急用らしくてね。ご家族が倒れたとかで。病院にいそいだんだわ。」
「・・・。」
「いけない、喋りすぎたな。
でも、まぁ事情があったんだよ。
許してやってあげてよ。」
「・・・はい。」
あたしは窓の外から歌舞伎町を眺めていた。
仕事終わりのホストが沢山いる。
皆、疲れた顔をしてる。
純君がタクシーに乗った理由を言わなかったのは、
営業なのか、
プライドなのか。
あたしにはよくわからない。
なんだか今日は沢山の偶然が重なった一日。
新宿は狭い街。
そんな街で、
沢山の人が、
色んなものを背負って生きてるんだ。
