「ここでーっすっ。」

芽衣ちゃんは健二君の腕を引きながら階段を下りた。


区役所通りの奥にあるビルの地下に、健二くんが働いてるスパイラルという店はあった。


周りは沢山のホストクラブが乱立している様子で、

多きなパネルが沢山置いてある。


正直、全部一緒の顔に見える。


あたしはきょろきょろしながら芽衣ちゃんと健二君の後を追った。




「いらっしゃいませー!二名様ご来店でーす!!」


健二君はそう言って店のドアを開けた。



トランスが流れる派手な店内の中で、


朝から酒を飲んでる男女が大勢いる。



異様な光景。


でも、なんか、嫌いじゃない。


あたしが知らなかった、また別の、夜の世界。



「愛、いこいこ。うちいつもビップルーム使うねん。」


「う、うん。」



あたしと芽衣ちゃんが二人でビップルームに向かうと、

店内に居るお客さんたちの目線があたし達を追っているのがわかった。


キャバクラよりも、

もっと重い見栄とプライドがぶつかる世界。




ビップルームに入ると、

テーブルには何十個のプレートがかかった焼酎と、

イルカの形をした高そうなボトルが何個も飾られていた。


「なんか、はずかしぃなぁ。担当のとこに友達連れてくるのは・・。まぁ、座ってて。」

愛ちゃんはそういうとシャネルの鞄をビップらしいふかふかなソファに置いて、

トイレへ行った。