どれだけ歩いたのか、あたしはやっぱり白の世界の中にいて、前に進んだ感覚は全くないけど歩いた感覚はしっかりある。

誰か居ないのか?

少しだけ、心細くなってきた。


「嫌やねん、こう言うの…」


何年ぶりかの弱音は谺することもなく、空間に吸い込まれていった。

「おかあさん」

泣き出しそうになったあたしの耳にきこえてきたのは、子供の声。

ぱっと辺りを見渡した。

あたしの視点には何もないが、足元に確かに『その子』はいた。