「え……ッ」

「ごめん…」


冷子を追い返したあの日以来冷子は私に話しかけてくる事はなくなり虐めもなくなった。
そんな平和な日が来たある日,千種ちゃんの口から"引っ越し"と言う言葉を聞いた。


「嘘…だよね?」


認めたくない。


「本当…。お父さんにまた辞令が出たらしくて…」

「どこに引っ越すの?」

「沖縄…」


沖縄ってもの凄く遠いじゃない…。


「私だって夜瑠と離れたくないけど!…仕方ないの…。」

「……」


私は,何を言えば良いのか分からなくなった。


「沖縄行っても夜瑠の事忘れないからさ。ね?」

「うん…」

「あと1週間,楽しい思い出いっぱい作ろうよ!」

「うん…」



あと1週間,されど一週間。

1週間で千種ちゃんは私の前からいなくなる。


*


「夜瑠,今日カラオケ行こ~」

「ゴメン,行けないや…」

「あ,そっか…」

「ごめんね…また今度行こうね」


放課後,私は千種ちゃんを教室に置いて先に帰った。


楽しい思い出作りたいのに,心と体がついていかない。

千種ちゃんがいなくなるのを素直に受け止められない自分がいた。



折角本当の友達を見つけたのに。

折角仲良くなれたのに。


何で居なくなってしまうの…?