小夏と氷室の住む住宅街は交流が盛んで、近所のおばさん達の笑い声が絶えなかった。

二人が仲良く帰る姿を見ては、ニコニコしながら手を振ってくれた。

「小夏ちゃん、相変わらず仲いいわねぇ。」

「ねぇ、若いっていいわね。」

小夏はこんな感じに冷やかされるのは嫌じゃなかった。

むしろ嬉しいくらいだった。

「そ、そんな。」

「あら照れちゃって。」

小夏の顔が真っ赤になる事は毎度の事。

好きな人と並んで羨ましがられるのは、本人にとっても恥ずかしかった。

まぁ、嬉しい事に変わりはないが。

でも、隣の氷室はいつも通り溜め息をつきながら呆れた顔をしていた。

「おばさん達も、旦那に孝行してあげなくていーんか?」

「あら氷室君たら、こうやって若い子を見るのはおばさん達の楽しみなのよ。」

おばさん達は無邪気に笑い合いながら、私達に別れを告げた。

氷室はこんなだが、小夏自身はなんとも思っていなかった。

実際、氷室は照れているだけなのだと分かっていたからである。