青ビーダマ

鎹氷室(カスガイ ヒムロ)は、我が幼馴染みの前までやってきて、息をきらした。

「な、一緒に帰ろうぜ!!」

親指を見せてギャグっぽく笑う氷室を見て、小夏はブッと吹き出す。

「ははっ。何言ってんのー、いつも帰ってるでしょ!?」

私にしかない特権が、ちょっと自慢できる。

だが、氷室は小夏の頭を軽く叩いた後、小さく耳打ちした。

「あそこの後輩、昨日俺にコクってきたんだぜ。」

氷室の目線の先には、小夏自身も可愛いと思える、小柄な女の子がいた。

「え…で!?どうしたの?」

小夏は少し不安混じりに聞いてみたが、氷室は小夏の背中を押して前に歩きだした。

「断ったよ、だから未練残させないように彼女の代わりな、お前。」

氷室は満面の笑顔で、小夏に微笑んだ。

小夏は、氷室のその後回しにしない性格に魅了されっぱなしだった。

昔、巣から落ちたヒナを、人間の匂いをつけずに虫とり網にのせて帰してあげたりもしていた。

次に、幼稚園でクレヨンを隠されたりしてイジメられていた子を助け、後で自分のクレヨンをその子にあげた事もあった。

そして、自分の好きだったクレヨンをあげて少し悲しかった氷室を励ましたのが、小夏。

格好悪いなんか思わない。

氷室の優しさが生んだ悲しさは、小夏の誇りなのだから―――…