「見えるぞ…アールの顔が
この部屋の隅々まで…ものを見るというのはこういうことか…」
ハッシュアンの大脳には
目の上に接触するように当てた精密な金属システムを通じて
この部屋のものの置かれた場所や細かい形などの情報が伝わっていた」

アールと名のるその客人は
その日皇女に話すべき事柄は全てハッシュアンに伝えることが出来
全てを内緒にするようにとその機械のことも内緒にすることで
ハッシュアンにプレゼントすると言い残し
その夜は王宮を去った。

機械人のビーグは全ての事柄を飲み込んでいた。
それ以上に興奮していたのはハッシュアンだったが

その夜、ハッシュアンには一ヵ月後に又来ると言い残したアールは
宮殿を去り
ハッシュアンは以前よりかは明るい声を出すようになった

ハッシュアンには唯一つ気がかりなことがあった

自分に生まれて初めて視力というものを与えてくれた
贈り物のそれら機械をこの城の誰にも気付かれずに生活していくということだった。