「ごめん。泣かせるつもりじゃなかったんだ。」


「謝るなら、こんな事しないでよ。信じてたのに。」


私は、彼を睨みつけた。


「もう、綾希の前には、現れないから。」


彼は、切なそうに微笑んだ。


「意味がわからないよ。」


「俺、引っ越すから、転校するんだよ。だから、最後に伝えたかった。それだけじゃ、足りなくて。思い出が欲しくて。綾希の意志なんか無視して。キスした。」


「引っ越し?なんで....」


さっきまでは、怒りしかなかったのに。


「父さんの転勤。みんなには、まだ秘密な。」


彼は、自分の口元に人差し指をあてた。


「いつ?」


「一週間後。」



「そんなすぐ?」


「前から決まってたよ。けど、綾希に玉砕するのわかってて告白してから言うって決めてたから。」


彼は、さっきより表情がすっきりしていた。


「さっきのもう怒れないじゃん。」