【短編】雪うさぎ

「ン・・・そりゃあるけど、誰も居ないところでこっそり泣く」

「さびしくないの?」

「……」

俺は答えなかった。

うさぎを護れるようになりたいと思ったことが、泣かなくなった原因なんて…

口が裂けても言えない。


そう思っていると急に軟らかいものが俺を包んだ。


「――っ!うさぎ?」

「ゆうちゃん一人で泣かないで。
私が一緒に泣いてあげるから。」


うさぎはどんな顔をしていたのだろう。

ぎゅっと抱ついてくる体温が愛しくて

思わず抱きしめ返して言った。


「じゃあ、うさぎが泣きたい時は俺のところにきて。
こうしててあげるから。」


うん、と頷き俺から身を離すと

窓の外の雪が視界に入った。


気づいたら


思いついたことを無意識に言葉にしていた。


「雪うさぎ作らないか?」

「雪うさぎ?こんな夜に?」

「大丈夫、玄関先なら雪も入らないし
それに、うさぎのお父さんが帰ってきたらすぐに分かるだろう?」


うさぎがおじさんの帰りを心待ちにしているのが分かったから

せめて外で一緒に待っていてやりたいと思ったんだ

一緒に遊ぶ事で気も紛れるだろうし

何よりもうさぎの為に何かをしてやりたかった。



「うん。作る」



俺はこのとき、



一生忘れられない笑顔を手に入れた。