私はその場に、勢いよく立ちあがった。


「ふざけんじゃないわよ!私がどんなに悩んだか知ってる?」


私の声はかなり大きかったらしく、周りの人が一瞬足を止めたくらいだ。


「これ買いに行くときも、病院行くときも。どんなに不安だったか、あんたにはわかんないでしょ?」


一回出てきた怒りは、なかなか止まらなかった。


「病院の先生にも、友達にも中絶した方がいいって言われて」


今度は、怒りを通り越して涙が出てきた。


「堕ろせるわけないじゃん!この子は、生きてるんだから!」


声を出し過ぎて、息が上がってた。


充留は、なにも言わずに私を見てた。


「産むから。産んで、絶対幸せにするんだから」


私はそれだけ叫ぶと急に身体の力が抜けて、その場にしゃがみ込んでしまった。


「産むんだから・・・」


頭の上から、ため息が聞こえた。


そのため息と一緒に襲ってきた目眩に、私は涙の流れる目を閉じた。